コラム

上海自由貿易試験区 時事ニュースまとめ

   

上海自由貿易試験区、新エリアの総合方案を公表

中国北アジア課 2019年08月15日

中国国務院は8月6日、「中国(上海)自由貿易試験区臨港新エリア総合方案に関する通知」(国発〔2019〕15号)(以下、通知)を発表した。

同日の記者会見で、上海市委員会常務委員の陳寅氏は、上海市は高度人材やインフラ建設などを主な対象とする新エリア専用の基金を設立する予定で、その規模は5年間で1,000億元(約1兆5,000億円、1元=約15円)程度になると発表した(「中国経済周刊」8月6日)。

新エリアの先行地域として指定されたのは、上海大治河の南側、金匯港の東側、小洋山島、浦東国際空港の南側の区域で、面積は119.5平方キロメートル、神奈川県の小田原市の面積(114.1平方キロメートル)と同規模になる。

新エリアでは、2025年までに投資や貿易に関する自由化・迅速化システムを構築し、2035年までに国際市場で影響力・競争力のある特殊な経済エリアを建設することが発展目標として掲げられた。

新エリアは投資や貿易、資金、輸送、就業の各分野の「自由化」を図ることを重点に置いている。

投資に関しては、電信、保険、証券、教育などの領域でさらに開放を進め、登記資本や投資方式などの制限を緩和し、公平な市場競争を促していく。就業では、高度人材の就業制限を緩和し、出入国や外国人材の永住権取得などの手続きを迅速化する。金融、建築、設計などの分野では、外国人の有資格者が届け出を行えば、新エリア内でサービスを提供することを認める。

上海市浦東新区、知的財産権保護センターを開設-ハイエンド設備製造やバイオ産業のイノベーションを支援-

上海発 2017年08月04日

上海市浦東新区政府は7月25日、「中国(浦東)知的財産権保護センター」の開設式を行った。浦東新区の2大新興産業であるハイエンド設備製造とバイオ産業の知的財産権取得の審査時間を半減する目標を立て、新興産業のイノベーションを支援する。

上海自由貿易試験区、検疫検査に24項目の改革措置-食品や越境電子商取引などの通関効率向上に期待-

上海事務所 2015年07月02日

 中国(上海)自由貿易試験区での輸出入検疫検査手続きの改革措置を実施してきた上海出入境検験検疫局は、6月から食品や越境電子商取引などの検疫検査制度に対する新たな24項目の改革措置を制定、実施している。

<検疫検査に10種類の手続き>

 上海出入境検験検疫局(以下、上海国検局)は6月24日、上海自由貿易試験区(以下、自貿区)における検疫検査制度に対する24項目の新改革措置を公表した。これにより、検疫検査手続きはさらに簡素化され、通関効率が大幅に向上するものと期待されている。改革措置の概要は以下のとおり。

1.検疫検査制度の改革

(1)輸出入貨物の分類管理を実施する。従来は輸出入貨物の検疫検査をした後で通関手続きを行っていたが、検疫検査の業務量を最大限に削減するために、自貿区での輸出入貨物の特徴に合わせ「快検快放」や「空検海放」などの10種類の手続きを設ける(注)。上海国検局は自貿区設立以来、「快検快放」など一連の新しい検疫検査手続きを模索しており、3月には「空検海放」を試験的に始めた。米医薬品大手アボット・ラボラトリーズは3月28日、粉ミルクのサンプルを自貿区内の外高橋保税区の検疫検査部門に届けて事前検疫検査を受けた後、6月1日に初の「空検海放」利用ケースとして外高橋保税区経由で粉ミルクを輸入した。通関所要時間は従来の1ヵ月から1週間に短縮された。

(2)食品輸入管理の制度改革を進める。食品の特徴に合わせて異なる検査検疫手続きを設け、検査検疫を行わない保税展示などの新制度を模索する。

(3)2012年から一部の企業を対象に試験的に実施してきた「快検快放」を普及させるために、明白な制度を制定する。

(4)機械加工設備、医療機器や木材などの専門検査機関の利用を進める。

(5)空コンテナに対する検査を簡素化する。

2.検疫検査関連の行政改革

(1)検疫検査の申告資格認可制度など許認可制度の撤廃・簡素化を進める。

(2)自貿区内の検疫検査部門の権限・責任を定めるリスト、検疫検査のネガティブリスト、検疫検査業務における企業の権利、検疫検査手続きなどを説明するガイドブックを作成する。

(3)専門検査機関の発展を促進し、専門検査機関に対する資格認可制度を改革する。

(4)積み替え貨物に対する検査検疫手続きを簡素化する。

3.貿易の利便性向上

(1)検疫検査を終えた後で貨物を自貿区に運び入れるやり方を変え、自貿区に運び入れた後で検査検疫を受ける制度を実施する。

(2)検疫検査関連書類のペーパーレス化を進める。

(3)信頼性の高い企業に対して検疫検査を簡素化する制度をさらに完備する。

4.サービス業の発展促進

(1)郵船・ヨット産業、(2)バイオ医薬産業、(3)コンベンション産業、(4)修理業、(5)越境電子商取引、(6)文化産業、(7)自動車の並行輸入、(8)グローバル企業の企業本部の設立、(9)研究開発(R&D)センターの設立を促進するために、これら分野の特徴に合わせて、(10)特別な検疫検査制度を構築し、輸出商品の品質を高めるための輸出品質安全モデル区の建設を進める。

5.情報共有促進のための制度

(1)各地の検疫検査部門間の情報共有を実現するために、コンピュータネットワークのシステムを完備する。

(2)自貿区の管理委員会、工商局、税務局などとの情報共有と事業連携を進める。

<輸入食品の保税展示で検査免除も>

 上海国検局は6月3日、上記「1.検疫検査制度の改革の(2)食品輸入管理の制度改革措置を進める」ことについて、「上海国検局が自貿区における輸入食品保税展示業の発展を支持するための若干の意見」を公布した。同意見によると、その食品の特性の説明や、書類の提出など必要な手続きを踏み、保税展示食品として認定された食品が自貿区内で展示される場合は検査を免除される(検疫は免除されない)。また、化粧品に関しても同意見が適用される。上海国検局は8月1日から同意見を実施するとしている。

(注)「快検快放」とは、信頼性の高い輸入者と危険度の低い輸出入貨物に対しては輸入者の自主検疫検査を認めるなど、検疫検査を簡略化・免除する制度。「空検海放」とは、大量の海運貨物について、輸入者は貨物が到着する前に航空便で少量のサンプルを運んで事前検疫検査を済ませておき、海運貨物が到着する時には簡略化された検疫検査を受ける制度。

上海自由貿易試験区、通関証明書をペーパーレス化

上海事務所 2015年06月29日

 上海出入境検験検疫局と上海税関は6月10日、中国(上海)自由貿易試験区の旧園区において、緊急事態などの特殊な事情を除き、固形廃棄物輸入以外の輸出入業務について通関証明書のペーパーレス化を実施すると発表した。

<7月1日から旧園区を対象に実施>

 上海出入境検験検疫局と上海税関は6月10日、「中国(上海)自由貿易試験区の通関証明書ペーパーレス化実施公告」(以下、通関証明書ペーパーレス公告)を公布した。

 通関証明書(中国名:通関単)とは、出入境検験検疫局が輸出入貨物に対し検疫や検査を実施した後で発行する同貨物の安全性を証明する書類だ。税関は通関証明書を受け取った後、通関手続きを行う。

 通関証明書ペーパーレス公告によると、上海出入境検験検疫局は7月1日から、緊急事態などの特殊な事情を除いて、固形廃棄物輸入以外の輸出入業務では紙の通関証明書を発行せず、上海税関に電子通関証明書を送信する。上海税関は同日から電子通関証明書を受け取ることになる。通関証明書のペーパーレス化によって、通関手続きの簡素化、効率化が期待されている。

 ただ、同政策の実施範囲は試験区の旧園区(外高橋保税区、外高橋保税物流園区、洋山保税港区、浦東空港保税区)に限定され、4月に追加された新園区(陸家嘴金融区域、金橋開発区域、張江ハイテク区域)では実施されない。

(参照:JETRO https://www.jetro.go.jp/